コンサートの感想です。

February 20 2000
February 26 2000
February 27 2000
March 31 2000 & April 3 2000
April 23 2000
April 30 2000
May 2 2000
May 3 2000
May 5 2000
May 29 2000
June 6 2000
July 9 2000
July 29 2000
July 30 2000

February 20 2000

芦屋交響楽団第52回定期演奏会

曲目
モーツァルト ピアノ協奏曲第13番
マーラ−   交響曲第9番

指揮  黒岩 英臣
ピアノ 東 誠三

この日のコンサートのお目当てはマーラーの第9。マーラーの音楽、特に第9が好きとは言うものの、生で聴くのは6、7年ぶり。
やや速めのテンポで始まった序奏。第1楽章では各パートの間でテンポが微妙にずれているような気がしたし、第3楽章では トランペットの高音が伸びなくて、トランペット奏者が、楽器をガンガン叩いてたり、と、気になるところがあるにはあったけど、 第4楽章できっちり締めてくれました。
コーダで、少しずつ音が消えていき、ついに最後の1音の余韻が消え去ったとき、この曲を聴いていつも感じることを、このライブでも感じたのです。 マーラーの9番を第1楽章から通して聴き、コーダの最後の1音の余韻まで聴き終えたとき、あたかも、誰かの長い一生の最後を看取ったかのような 気持ちになるのです。今回のライブでも、その気持ちを感じることができ、さらには、今までなかったことで、1日たった今でも不思議なのだけど、 コーダで音が少しづつ弱まっていくのと対称的に、自分の心臓の鼓動が少しづつ強まっていったような気がしたのです。
演奏そのものは、細かな傷が多くて必ずしも聴いていて満足のいくものではなく、名演とはいえないのだけれど、それを補って余りある、黒岩氏の指揮と 芦屋交響楽団の熱演のおかげで、充実した日曜の午後を過ごせました。

February 26 2000

京都アルティ弦楽四重奏団第3回公演

曲目
モーツァルト弦楽四重奏曲第14番
ベートーヴェン弦楽四重奏曲第12番

ヴァイオリン豊嶋 泰嗣
矢部 達哉
ヴィオラ川本 嘉子
チェロ上村 昇

この日のお目当てはベートーヴェン。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、ライブでは昨年の秋にハーゲン・カルテットの演奏会で「セリオーゾ」を 聴いた事があるくらいで、後期の作品を生で聴くのは初めて。しかも、このカルテットのメンバーを見てお分かりいただけると思いますが、皆、ソリストとしても 一流の人たちで、このカルテットの過去2回の演奏会はいずれもレベルの高い演奏だったこともあって、今回も期待して出かけました。
ベートーヴェンはここ数ヶ月、イタリア四重奏団とアルバン・ベルクの新録を聴いていたのですが、実際に生で聴いてみて初めて、 第2楽章が非常に瞑想的な音楽だということに気づきました。第4楽章は、コーダに入るまではややゆったりしたテンポだったのが、 コーダに入ると、ぐっと加速していったのが印象的。

多くの弦楽四重奏団は、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを固定しているように思いますが、アルティ弦楽四重奏団の場合は、曲によって 第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの奏者が交代するのです。今回の演奏会では、モーツァルトは矢部さんが第1ヴァイオリン 、ベートーヴェンは豊嶋さんが第1ヴァイオリンでした。
多くの弦楽四重奏団で第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの奏者を固定している事が多い理由としては、果たしてどのような理由があるのでしょうか?

February 27 2000

井上まゆみピアノトリオ演奏会<京都>春の会

曲目
武満 徹ビトウィーン・タイズ
湯浅 譲二ソリテュード・イン・メモリアム T.T.
細川 俊夫メモリー・尹伊桑の追憶に
マイケル・ナイマンタイム・ウィル・プロナウンス

ピアノ井上 まゆみ
ヴァイオリン日比 浩一
チェロ雨田 一孝

この日の曲目は、全て知らない曲でした。武満と湯浅の曲は、雰囲気としてはドビュッシーに近く、全体的なトーンは弱音主体。
この日、最も印象に残ったのは細川の作品。ピアノにかなり特殊奏法があって、「珍しいものを見せてもらった」という感があります。 ピアノの弦を指で弾いたり、弦を指で押さえたまま鍵盤で弾いたり、ピアノの最も低い方の音と、最も高いほうの音を同時に鳴らしたり。。 と言うわけで、この曲では、ピアニストは、椅子には座らず、ほとんど立ちっぱなしで演奏してました。
前3曲の日本人の曲とは打って変わって、最後はナイマンの曲。ナイマンって、確かアメリカ人だったと思うけど違いましたっけ?
日本人の作品3曲は、いずれも弱音主体だったのだけど、ナイマンの曲は強弱の緩急がついていて、メロディはアメリカのポップスに近い感じ。
総体的には、コンサートが始まる前に想像していたよりは古典的な手法を用いた作品が多かった、という印象を受けました。

March 31 2000 & April 3 2000

「コンセルヴァトワールの巨匠たち」(31日京都コンサートホール、3日大阪いずみホール)

曲目
モーツァルトアダージョとフーガ K546
G.プーレ(vn) 森悠子(vn) T.アダモプロス(va) Ph.ミュレール(vc)
ベルリオーズオフェリアの死
A-M.ロッド(sop) D.メルレ(pf)
R.シュトラウスオフェリアの歌
A-M.ロッド(sop) D.メルレ(pf)
ルクーピアノ四重奏曲
G.プーレ(vn) T.アダモプロス(va) Ph.ミュレール(vc) D.メルレ(pf)
休憩
ジョリヴェリノスの歌
Ph.ベルノルド(fl) 森悠子(vn) T.アダモプロス(va) Ph.ミュレール(vc) H.セルメット(pf)
ラヴェルスペイン狂詩曲
H.セルメット(pf) G.ブリュデルマッシェール(pf)
バルトークコントラスト
横川晴児(cl) R.パスキエ(vn) G.ブリュデルマッシェール(pf)

このプログラムを見て分かるように、今回の「コンセルヴァトワールの巨匠たち」は珍しい作品が多いコンサートでした。 個人的には、「ルクーの四重奏を最初にCDで聴いて以来6、7年目にしてようやくライブで聴く事ができる」、という 楽しみがあったし、ジョリヴェもコンサートで聴くのは初めてだった上に演奏者もフランスの一流の奏者が揃っている、という事で、 期待して出かけたのですが、結果として、期待を裏切らないコンサートでした。

モーツァルト、ベルリオーズ、R.シュトラウスは初めて聴いた曲だったのですが、特に印象的だったのはR.シュトラウス。 「ハムレット」第4幕第5場での、気の狂ったオフェリアの歌なのだけれど、伴奏ピアノのうつろな響きと、金切り声を思わせる ソプラノの高音への跳躍が、発狂したオフェリアの心の内を映し出すような音楽でした。今、自宅で「ハムレット」の第4幕第5場を 読んでみたけれど、歌曲での歌詞以上にオフェリアの台詞には脈絡がなく、今再び、R.シュトラウスの、オフェリアの心理描写の巧さに感銘を 受けました。
ルクーは、1870年にベルギーで生まれ、1894年に腸チフスのためパリで亡くなった、フランク門下の作曲家です。ピアノ四重奏曲は 1888年から、亡くなる1894年まで書き続けられたものの、完成する事なく、第2楽章までが残されているのみです。コンサートでは 第1楽章のみが演奏されたのですが、できる事ならば第2楽章まで聴きたかった!それが心残りでした。
ジョリヴェの「リノスの歌」はフルート、弦楽三重奏、ハープによるCDを持っていたのだが、このコンサートではハープに代わってピアノが 伴奏していました。ジョリヴェの音楽の原始的なエネルギーを感じ取る事ができて、個人的には一押しだった曲です。
ラヴェルのスペイン狂詩曲に、ピアノ連弾の楽譜がある、というのは知りませんでした。オーケストラで聴くのと違い、音の細かい動きを 聴き取ることができ、新鮮な体験でした。
最後の、バルトークのコントラスト。作曲された時期は、バルトークがヨーロッパを離れる直前の1938年、という事だから弦楽四重奏曲6番と あまり変わらない時期。とはいうものの、弦楽四重奏のシリアスさとは対照的に、ユーモラスですらある曲調。CDで聴いているだけでは 分からなかったのだけれど、第3楽章では、クラリネットとヴァイオリンを持ち替えて演奏していました。そういうことを舞台で見ていて 再度CDを聴きなおすと、たしかに楽器を持ち替えているところでは明らかに音色が違った。

ともかく、いろいろな発見のあった、興味深いコンサートでした。31日に京都で聴いて、1晩だけでは盛りだくさん過ぎて欲求不満になったので 3日に大阪いずみホールへ、再び聴きに行きました。私の友人も、京都、大阪の2公演を聴きました。やはり、「1晩だけでは欲求不満になった」 という事でした。

April 23 2000

グリーン・ユース・オーケストラ2000 京都公演

曲目
斉木 由美扉〜オーケストラのための(2000,委嘱世界初演)
マーラー交響曲第9番(1909)

指揮金 聖響
チェレスタ藤島 啓子
グリーン・ユース・オーケストラ

グリーン・ユース・オーケストラは、関西圏の大学生や社会人からオーディションで選抜されたメンバーで構成されたオケだ、ということなので、 おそらく、常駐のオケではない、と思います。
斉木由美の「扉」の作曲の動機はパンフレットによると、

古今東西、人々は「何のために生き、なぜ死ぬのか」という根源的な想いを抱いてきました。わたしもまた友人の生と死に接したひとりとして、 私なりの言葉にならない神への想いと祈りがありました。そうした心の葛藤が、自然に今回の作曲へと繋がっていったように思います。
曲そのもので印象的だった部分は、3つ。
曲の最初、ピアニッシシモ(?)で、本当に、聴こえるか聴こえないか、というくらいの弱音で鳴らされる鐘の音。 次第に鐘の音がクレッシェンドしていき、ホールの中を鐘の音のあいまいな響きが次第に満たしていくところ。
曲の中間部、他の全てのパートが休止している中、打楽器群が、伝統的な音楽の拍子感というか、リズム感から離れた、非音楽的リズムで連打しているところ。
そして、曲の最後、冒頭部分を再現するかのように鐘の音があいまいに響き、鐘の音が消えると、打楽器奏者が木の板を叩き始める。 少しして、ピアノのほとんど最高音域の音が響き始める。ピアノ奏者はピアノの弦を少しづつ強く指で押さえてゆき、ピアノの音は、ピアノ本来の音から少しづつ 打楽器的な音へと近づき、最後には、木を叩く音とほとんど同質の音になり、曲を終える。 木の板と、打楽器的なピアノの音は、あたかもこの曲の題名である「扉」を叩く音を象徴するかのようだった。

休憩をはさんでのマーラーの9番は、勢いで突っ走ってる、という感のある演奏でした。第2楽章のレントラー、それぞれ違うテンポで演奏される 3つの部分のうち、Tempo2のワルツの部分が妙に速いテンポだったのと、第3楽章のコーダ、プレストで全てのパートが突っ走る部分、タクトが速すぎて弦パートが ついていけず、音がなまってしまってた、というのがそう感じた理由です。
その一方で、「おっ」と思わせる部分が2箇所。第2楽章と第4楽章のコーダの直前、通常よく聴かれる演奏に比べて全パートが休止する時間がやや長く、 「ここで音楽の流れが変わるぞ」ということを強くアピールする「間」のとり方だったな、と感じました。

April 30 2000

第6回大垣音楽祭「ダイナミック室内楽T」

曲目
クルークハート五重奏曲
白尾 彰(fl) 小畑 善昭(ob) 山本 正治(cl) 松崎 裕(hr) 前田 信吉(fg)
ドホナーニ弦楽三重奏曲「セレナーデ」
加藤 知子(vn) 店村 眞積(va) 毛利 伯郎(vc)
中田喜直(寺山修司 詩)木の匙
井上 しほみ(sop) 土屋 弘二郎(bar) 小関 紘子(pf)
シューベルト弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」
服部 譲二(vn) 久保 陽子(vn) 菅沼 準二(va) 上村 昇(vc)

毎年ゴールデンウィークの時期に岐阜県大垣市で、国内のトップアーチストを集めて開催される大垣音楽祭。 私はこの音楽祭を2年前、偶然知って以来毎年大垣へ足を運び、今年で3年目。

クルークハート、という作曲家は、初めて聞く名前で、手持ちの音楽辞典にも載っていませんでした。 プログラムの曲目解説によると、

アウグスト・クルークハート(August Klughardt 1847-1902)は19世紀後半のドイツで活躍した作曲家・指揮者で、ワイマルや デッサウで楽長を務めた。リストやワーグナーなどの新しい傾向の音楽の影響も受けたが、室内楽では古典的な様式や書法に忠実である。
という事でした。私は木管合奏が苦手で今ひとつ集中して聴けなかったのですが、ずいぶん古典的な響きがする曲、という印象を受けました。

エルネー・ドホナーニ(1877-1960)は、現在指揮者として活躍している、クリストフ・フォン・ドホナーニの祖父にあたる人です。弦楽三重奏曲は、 比較的初期の作品(1902)という事で、ロマン派的な曲。第1楽章の行進曲風の主題がとても印象的です。第2楽章、第3楽章で、美しいメロディと 激しく動くパッセージが交互に現れ、第4楽章の暗く美しい、メロディアスな主題と変奏。フィナーレ、第5楽章はとても活き活きとしたアレグロ。 コーダで、第1楽章の行進曲の主題が戻ってきて曲を終えます。この演奏では、加藤知子のヴァイオリンの音色がよく響いていた、というのが印象に 残っています。今まで、加藤知子の演奏は実演でもCDでも聴いたことがなく、全く先入観なしで聴いたのですが、よく響くヴァイオリンで、かといって うるさい訳ではなく、ヴィオラとチェロとのバランスもよかった。

中田喜直の「木の匙」は、寺山修司の詩を歌詞とした歌曲集(全11曲)で、結婚をテーマとして、若い夫婦が生活を築き上げていく様子を歌ったもの。 今回は第1曲「小さな五つの歌」、第2曲「テーブルについて」、第6曲「やがて生まれてくる子のための子守唄」、第8曲「妻の童話」、 第10曲「悲しくなったときは」、第11曲「世界」を抜粋していました。結婚がテーマ、という事で歌の描き出す世界は、優しさに溢れていました。 時として、短調のメロディが暗い影を落としていたようにも思うけれど、これは何かの暗示なのだろうか?

休憩をはさんで、最後はシューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」。特に印象に残ったのは第1楽章。アレグロの部分と、ゆったりしたテンポの部分との テンポの対比がシューベルトの当時の心境を抉り出すように思えて、とても緊迫感に溢れていました。第2楽章の、歌曲「死と乙女」から引用した主題を、 とても悲しげに歌わせているところ、第3楽章、第4楽章で荒々しくエネルギッシュに突っ走って行くところも、印象的。
毎年この音楽祭で顔を合わせているメンバーとは言え、常設のカルテットではないのに息があっていることに感心するばかりでした。

May 2 2000

第6回大垣音楽祭「ダイナミック室内楽U」

曲目
ロッシーニチェロとコントラバスのための二重奏曲
上村 昇(vc) 西田 直文(cb)
モーツァルトクラリネット五重奏曲
山本 正治(cl) 久保 陽子(vn) 服部 譲二(vn) 店村 眞積(va) 堀 了介(vc)
シューベルト「美しい水車小屋の娘」より「しおれた花」
井上 しほみ(sop) 小関 紘子(pf)
シューベルト「しおれた花」による変奏曲
白尾 彰(fl) 弘中 孝(pf)
バルトーク弦楽四重奏曲第2番
原田 幸一郎(vn) 加藤 知子(vn) 菅沼 準二(va) 毛利 伯郎(vc)

第6回大垣音楽祭の有料コンサート第2夜。

ロッシーニの「チェロとコントラバスのための二重奏曲」、イギリスの資産家サロモンズの依頼によって作曲され、サロモンズ自身の演奏するチェロと コントラバス奏者のドラゴネッティにより初演されたものの、1968年に至るまで、楽譜はサロモンズ家に埋もれたままだったとか。 コントラバス、というと、オーケストラ曲でベースを受け持ち、派手な動きがあまりないのですが、この曲では、チェロもコントラバスも ものすごく激しい動きのあるメロディを奏でていました。超絶技巧、といってもいいでしょう。コントラバスの動きが激しい曲は、私は初めて聴きました。

モーツァルトのクラリネット五重奏曲、この曲を聴くと私は、天国にいるような気分になるのが常なのですが、今回のコンサートでも、 やはりそのような気分になりました。

シューベルトの歌曲は、もともとはテノールのための曲、という事だそうですが、今回は大垣出身のソプラノ歌手、井上しほみさんが歌われました。 歌曲に引き続いて、歌曲の主題によるフルートとピアノのための変奏曲。悲しげな変奏、力強い変奏、様々に変化をみせ、最後はフルートが華やかな変奏を奏でて 曲を終えました。

第2夜の圧巻は、バルトーク。一番楽しみにしていた曲です。昨年も、2nd以外同じメンバーで(昨年の2ndは渡辺玲子)、 バルトークの1番の熱演を聴いたその記憶が残っていたので、とても期待していました。 その期待を裏切らない、緊迫感に満ちた、聴いているこちらが息をつく暇も無いほど、そして手に汗握るような熱い演奏でした。
公開されていたゲネプロも聴いたのですが、バルトークでは、4人が、それこそ練習番号ごとに綿密に打ち合わせて音楽を創っていく様子を窺い知る事ができたのが貴重でした。

May 3 2000

第38回フレッシュフレンドリーコンサート カルテット・デュ・ドミトリー

曲目
モーツァルト弦楽四重奏曲第15番
シューベルト弦楽四重奏曲第12番(断章)
ラヴェル弦楽四重奏曲

ヴァイオリン原 雅道
吉村 知子
ヴィオラ長田 真理子
チェロ矢野 晶子

カルテット・デュ・ドミトリーは、新日本フィルの4人の奏者によって結成された四重奏団。今回のコンサートは、 東京はJR代々木駅近くのマンションの1室で催されたサロンコンサートでした。 今回の演奏者の一人であるヴィオラ奏者の長田さんとは、数ヶ月前から頻繁ではないもののメールのやり取りがあって、 それで東京まで聴きに行くことを決めた演奏会でした。

私は、サロンコンサートを聴くのが初めてだったのですが、ひとことで言って、とても刺激的な体験でした。 前から2列目の席に座ったので演奏者との距離がわずか2、3メートル。そしてマンションの1室という事で、 ホールでのコンサートと違って残響はほとんどなく、楽器の音、そして演奏者の呼吸までがダイレクトに聴こえてきました。 そして、弱音器をつける、かすかだけど「グサッ」という感じの音までも聴こえてきたのがとても印象的でした。
演奏そのものは、多少傷もありましたが、とてもアットホームな雰囲気の演奏、そしてチェロ奏者の矢野さんのフレンドリーな 曲の解説など、とても楽しめる演奏会でした。
演奏会場は、天井の低いマンションの1室で残響がほとんどなかったので、本番までに音のバランスを調整するのに ずいぶん苦労されたのではないかと思います。

May 5 2000

第6回大垣音楽祭「ダイナミック室内楽V」

曲目
J.S.バッハ2台のヴァイオリンとヴィオラのためのテルツェッティ
久保 陽子(vn) 花井 志おり(vn) 亀井 綾乃(va)
ドップラー2台のフルートとピアノのためのリゴレット・ファンタジー
磨見 沙織(fl) 白尾 彰(fl) 小関 紘子(pf)
ベートーヴェン五重奏曲
小畑 善昭(ob) 山本 正治(cl) 松崎 裕(hr) 前田 信吉(fg) 弘中 孝(pf)
ペルゴレージオペラ・ブッファ「奥様女中」(演出 大島 尚志)
井上 しほみ(セルピ−ナ,Sop) 土屋 弘二郎(ウベルト,Bar) 服部 譲二(ヴェスポーネ)
原田 幸一郎(指揮) 久保 陽子、加藤 知子(1st vn) 花井 志おり、井上 静香(2nd vn)
店村 眞積、亀井 綾乃(va) 堀 了介(vc) 西田 直文(cb) 増田 暁子(cemb)

第6回大垣音楽祭の最終日、そして有料コンサートの3日目。この日最大の目玉は、「奥様女中」。台詞は全て日本語に訳して演じられました。
奥様女中は、登場人物が3人で、そのうち一人、ヴェスポーネ役は歌のパートがなく、パントマイムだけ。 今回は、ヴァイオリニストの服部譲二さんがヴェスポーネを演じたのですが、道化役をとても面白く演じられました。

奥様女中のあらすじは、女中のセルピーネが策略をめぐらして主人のウベルトと結婚してしまう、というもの。 セルピーネが他の男と結婚すると言って、ウベルトの嫉妬心を煽るのだが、そのときにヴェスポーネに、 「雷大尉」なる短気な軍人に変装させます。

結婚相手の名前をウベルトに聞かれた、井上しほみさん演じるセルピーネが、わざと「石田三成」と間違えて会場は大笑い。 今回の舞台でヴェスポーネ演じる服部さんの変装は、鎧兜をまとった戦国武将の格好。今、大垣では関が原の合戦400年を記念した「決戦関が原、大垣博」 というイベントが開催されているのを受けてのこと。「雷大尉」の登場で会場は爆笑の渦。
ウベルトの言葉に怒った、ヴェスポーネ扮する「雷大尉」が刀を抜くと・・・。中からヴァイオリンの弓。ここでも会場は大笑い。 会場だけでなく、久保陽子さんや加藤知子さんを始め弦楽パートの面々も笑いをかみ殺しながら演奏されていました。
ウベルトとセルピーネが結婚すると、ヴェスポーネ演じる服部さんが、舞台の上でヴァイオリンを演奏して、結婚を祝福するところなど、なかなか面白い演出だ、 と感心しました。

そのほかにも、細々した笑いどころを作られた服部さんの道化ぶりに、たっぷりと笑わせてもらいました。

May 29 2000

SAWA QUARTET ベートーヴェン弦楽四重奏全曲チクルス第1回(大阪 ザ・フェニックスホール)

曲目
弦楽四重奏曲第6番
弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」
弦楽四重奏曲第15番
澤 和樹(vn) 大関 博明(vn) 市坪 俊彦(va) 林 俊昭(vc)

これから来年4月まで、大阪以外に東京、岐阜、福岡、佐世保で計6回のチクルスが開催され、今回は第1回公演でした。
私はSAWA QUARTETを聴くのは初めてだったのですが、3曲とも、緊密なアンサンブルと安定した技術に裏付けられた、安心して聴く事のできる演奏でした。

曲そのものについてですが、私は前期の6曲(1番から6番)は、まだCDでも本腰を入れて聴いた事がないので11番と15番についてだけ。
11番「セリオーソ」は、第1楽章の冒頭の強奏、チェロの音色がかなり強く、そのせいで曲の持つ荒々しさが強調されていたのが印象に残っています。
15番は、第3楽章「病気の回復した者が神に感謝する聖なる歌」が圧巻。一音一音が、ホールの中の空間をたゆたっている、音がただそこに「存在」していました。 第1楽章で見せた苦しみと悲しみの表情、第2楽章での一時のくつろぎと、前の2つの楽章で見せる表情と、第3楽章の最初の音が示す感情とは属している世界が 明らかに異なっていて、第3楽章は現実世界での苦しみとは無縁の、標題にある通りの「神への感謝」としかいいようのない崇高な音楽と、遊び心のある軽妙な 音楽とが、不思議な明るさをこの四重奏曲に与えています。第4楽章は続く第5楽章への序奏的役割で、第5楽章は悲しみを乗り越えようとする、力強い意思を 感じさせる音楽。第3楽章を除くと一貫して悲しみとか苦しみが聴こえてくるのだけど、第3楽章は別世界の音楽のように聴こえる。事実、この四重奏曲は、 第3楽章を除いた形で作曲していた最中、ベートーヴェンは病に苦しんで作曲を中断せざるを得なくなり、病から回復した後、第3楽章を書き加えたのだから、 第3楽章だけ楽想が違うのは理由があるのです。これはCDなどの解説で読んで頭では分かっていても、いざ実演を聴いて初めて実感する事なのかもしれません。

アンコールでは、弦楽四重奏曲第13番より、第5楽章「カヴァティーナ」が演奏されました。この曲も、優しく、そして悲しい音楽で、ベートーヴェンの弦楽四重奏の中で 掛け値なしに最も美しい楽章でしょう。
メインの3曲で素晴らしい演奏を聴かせていただいて、さらにアンコールで「カヴァティーナ」まで聴けて、とても充実したコンサートでした。
次回7月9日(日)のチクルス第2回、ラズモフスキー2番と13番(終楽章は大フーガ)を聴くのが、今から楽しみになってきました。

June 6 2000

諏訪内晶子 ヴァイオリン・リサイタル(野洲文化ホール)

曲目
ヘンデル(ハルヴォセン編)パッサカリア
プロコフィエフヴァイオリン・ソナタ第1番
休憩
プロコフィエフ5つのメロディ
ラヴェルピアノ三重奏曲
諏訪内 晶子(vn) 児玉 桃(p) フランソワ・サルク(vc)

滋賀県野洲町での、諏訪内晶子さんのヴァイオリン・リサイタルに出かけてきました。「音楽の友」6月号のコンサート情報のページに掲載されていたのを見て、 聴きに行こうかどうしようか迷っていたら、「音楽の友」の発売日の次の日、野洲町役場に勤めている友人から「チケット余ってるけどどうや?」と、電話があって 聴きに行くことを決めた、そういうコンサートでした。

ヘンデル(ハルヴォセン編曲)のパッサカリアは、ヴァイオリンとチェロのための曲。原曲すら聴いたことなく、正直、大して期待せずに聴いていたのですが、これが面白かった。 最初は、いかにもバロック風の曲想だったのが、いつの間にか「後期ロマン派か現代曲か?」というような技巧を駆使した曲想に変わってました。ハーモニクス奏法が出てきて、 正直少し驚きました。あんまり、バロック時代の曲でハーモニクス奏法を聴いた事ないような気がするのですが、そもそもハーモニクス奏法ってバロックの時代からあったのでしょうか・・・。
プロコフィエフのソナタは、部屋の片隅でほこりをかぶっていた、ムローヴァのCDを引っ張り出して2週間前から予習だけしていたのですが、今回のコンサートでは驚かされました。 諏訪内さんはもちろん、児玉さんも、本当に「さらり」とプロコフィエフのソナタを演奏されたのに驚きました。演奏する側から見て、プロコフィエフのソナタが難曲なのかどうなのか、 私にはわからないのですが、お二人とも全然難しくなさそうに弾いてたのが印象に残っています。

休憩をはさんで、プロコフィエフの5つのメロディ。ヴァイオリンとピアノのための5つの小品で、初めて聴く曲でしたが、きれいな曲、という印象でした。
最後のラヴェルのトリオ。私はこの曲が目当てでした。やはり、ここでも、諏訪内さん、児玉さんだけでなく、サルクさんの技巧に驚かされました。 たぶん、CDで聴いてもいい演奏、と感じられるレベルだと思うのですが、それを生で聴けた事に感動。特に、終楽章のコーダのピアノの華麗な事!
児玉桃さんのピアノにはぜひ注目!です。会場であった友人が「今日は児玉桃が目当て。」と言っていた理由もわかるような気がしました。

アンコールは、ブラームスのピアノトリオ2番から第2楽章。そして、アンコールの2曲目はラヴェルのトリオから第2楽章。アンコールでのラヴェルは、 本番の演奏よりも、幾分肩の力が抜けて、3人ともが楽しそうに演奏されていたのが印象的でした。

July 9 2000

SAWA QUARTET ベートーヴェン弦楽四重奏全曲チクルス第2回(大阪 南森町 モーツァルト・サロン)

曲目
弦楽四重奏曲第8番(ラズモフスキーセット第2番)
弦楽四重奏曲第13番/「大フーガ」
澤 和樹(vn) 大関 博明(vn) 市坪 俊彦(va) 林 俊昭(vc)

SAWA QUARTETの、ベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏チクルスの第2回公演でした(第1回公演はこちら)。
今回の公演は、雑居ビルの1階を使った、サロンでの演奏会でした。一般のコンサートホールより、ずっと小さな空間での演奏なので、 演奏者との距離が近く、聴き手の側の緊張感が高まる、という反面、室内の空間が小さく残響がほとんどなくて楽器から直接伝わってくる音が 主体になるため、サロンコンサートに慣れていない私の耳には、音響的には少し辛いものがありました。

8番は、私自身、どちらかといえば苦手な曲です。1楽章から3楽章までがどうにも重くて・・・。第4楽章のプレストだけは、唯一好きな楽章です。 今回の演奏では、第4楽章はテンポを押さえ気味で始め、途中でほんの少し手綱を緩めるような感じで、少しだけテンポを速めていました。 聴いていて、少し欲求不満を感じてきたころにコーダ。コーダで、それまでセーブしていたエネルギーを8割だけ吐き出すかのような感じでテンポを速めていました。 普段聴いているイタリア四重奏団の演奏は、最初からテンポが速くコーダでぐっとテンポが速まる演奏で、イタリア四重奏団(25年前の演奏!)とは ずいぶん違うアプローチだな、という印象を受けましたが「なるほど、聴き手をじらしておいて最後に欲求不満を解決する、というやり方もあるのか」と好感を持ちました。
今スコアを確認してみると、テンポの指定については必ずしもスコアどおりではないようにも思えます。スコアでは楽章の冒頭でPresto、全音符=88のテンポ指定で、 コーダでPiu Presto、全音符=112というテンポ指定。つまり、最初から速いテンポで最後でさらにぐっと速くなる。 一般によく言われる「スコアの解釈の仕方」の話を、今この一文を書いている時点で、初めて実感として認識しました。

13番は、問題をはらんだ後期弦楽四重奏の中でもある意味で難物の作品です。フィナーレの第6楽章が2種類存在するという点と、 ベートーヴェンの時代の弦楽四重奏には異例の6楽章構成であるという点です。 特に問題なのは、フィナーレの第6楽章。ベートーヴェンは、最初、長いフーガの楽章を書いたのですが、初演の際、「長大で難解」という理由で聴衆からも 出版者からも不評だったため、後に短いアレグロの楽章に差し替え、もともとのフーガ楽章は「大フーガ」という独立した作品として出版されました。 今回の公演では、オリジナルの「大フーガ」がフィナーレに演奏されました。
また、ベートーヴェンの後期四重奏曲の、特に5楽章以上の曲に共通して言える事なのですが、楽章ごとに、長さも曲の雰囲気もバラバラなのです。 暗く崇高な楽章もあれば、舞曲風の楽章もあり、しかもそれらが隣り合って配置されているという点です。曲としての統一感がない、 という批判もあるでしょうが、論理的整合性よりも構成の自由さをより重視し、追求したかったのだろうと、私は考えています。
話がずいぶんそれましたが、演奏そのもので印象的だったのは、第5楽章「カヴァティーナ」の曲想と、第6楽章「大フーガ」の曲想とのコントラストでしょう。 「カヴァティーナ」はとても抒情的で悲しげなアダージョの曲で、ベートーヴェン自身が「会心の作」と語ったと伝えられている、後期四重奏の楽章の中でも最も 美しいもののひとつ。 一方の「大フーガ」は荒々しくアレグロで始まり、密度も緊張感も高い、長大な音楽。
マーラーやバルトークや前衛音楽を体験した現代人の耳には「大フーガ」はそれほど長大で難解に聴こえないのかもしれないけれど、 「大フーガ」を初演で聴いた人たちは、たぶん、「ついていけない」と感じただろうな、と、演奏を聴きながら感じました。
アンコールは13番の第4楽章「ドイツ舞曲」でした。

July 29 2000

第8回木津川やまなみ国際音楽祭 オープニングコンサート(京都府南山城村 やまなみホール)

曲目
テレマントランペット、2本のオーボエ、通奏低音のための協奏曲ニ長調
ラインホルト・フリードリッヒ(tp) 青山 聖樹、河野 正孝(ob) 滝本 博之(fg) 奥田 一夫(cb) 河野 まり子(cemb)
ドビュッシー弦楽四重奏曲
梅津 美葉、吉川 緑(vn) 大野 かおる(va) ルートヴィッド・カンタ(vc)
J.S.バッハブランデンブルク協奏曲第5番
金 昌国(fl) 玉井 菜採(vn) 河野 まり子(cemb) 吉川 緑(vn) 大野 かおる(va) ルートヴィッド・カンタ(vc)
ストラヴィンスキー兵士の物語
小林 美恵(vn) 奥田 一夫(cb) 糸井 裕美子(cl) 滝本 博之(fg) ラインホルト・フリードリッヒ(tp) 呉 信一(tb) リー・ビャオ(perc) 西村 恵一(narr)

京都府の最南端、南山城村で毎年7月末の週末に開催される「やまなみ音楽祭」に出かけてきました。南山城村は京都府最南端、奈良県と三重県に接した木津川流域の山村。 自然が豊かで、景色の美しい場所です。

今回のコンサートのお目当てはドビュッシーの弦楽四重奏曲。これが素敵な演奏で、特に第3楽章など、夢の世界のような美しさ。4人の奏者の息の合ったアンサンブル、 そして素晴らしい技術を楽しく聴きました。特に第1ヴァイオリンの梅津さんが情感豊かに演奏されていたのが印象的でした。 これだけでもはるばる山奥の村まで聴きに来た甲斐があった、というものです。

ストラヴィンスキーの「兵士の物語」、CDでの予習もしていなくて、聴くのは今回初めて。ナレーションとアンサンブルの合奏とが交互に進んで行く、という構成でした。
戦場から故郷へ戻る途中の兵士が悪魔に出会い、3日間だけ家に来てくれと言われ、悪魔の家に3日間だけ泊まることになるが、実際には3年が過ぎ去っていた。 その後、悪魔と勝負して一旦は悪魔を出し抜くことができたけれど、最後は悪魔に魂を奪われる、というストーリーで、ナレーターがストーリーを語り、兵士と悪魔の台詞を語る傍ら、 アンサンブルが情景を音楽で描写する、という作品で、ナレーターの西村さんの個性豊かな演技とナレーションで、会場は大いに沸いていました。あまりにその演技が可笑しくて、 ヴァイオリンの小林さんが、笑いをこらえながら演奏されていました。

July 30 2000

アンサンブル・ア・ラ・カルト 〜 ジャパン・ストリング・クヮルテット(大阪 ザ・フェニックスホール)

曲目
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第1番
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第15番
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第9番<ラズモフスキー第3番>
久保 陽子、久合田 緑(vn) 菅沼 準二(va) 岩崎 洸(vc)

ベートーヴェンの前期、中期、後期の弦楽四重奏曲を1曲づつ配した演奏会でした。久保陽子さんと菅沼準二さんは、私が毎年GWに聴きに行く「大垣音楽祭」のレギュラーメンバーであり、 その演奏の素晴らしさを実感しているので、とても期待して出かけました。
前期の四重奏曲はほとんど未聴に近い状態なのでなんともいえないのですが、15番とラズモフスキー3番の素晴らしかった事。演奏そのものは、非常にオーソドックスで、 ある意味安心して全曲を聴き通すことができました。
15番は、「病が癒えたものの神への聖なる感謝の歌」とベートーヴェン自身によって題された第3楽章が全曲の白眉。第3楽章の中の、荘重な部分と軽妙な部分との対比が印象に残っています。
9番(ラズモフスキー・セットの第3番)で特筆すべきところは、第4楽章。あらゆる迷いや悩みを振り切り、捨て去ったかのように、力強く、恐ろしく速いテンポで疾走! 第4楽章のコーダに至るまで、力強く速いテンポで、一糸乱れぬ、緻密なアンサンブルに感銘を受けました。

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