コンサートの感想です。

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August 25 2001
October 20 2001

August 25 2001

第5回 たのしい音楽会「フランス音楽のフルコースを召し上がれっ!」(京都府立府民ホール「アルティ」)

曲目
プーランク仮面舞踏会より カプリチォ
ブレビーユソナチネより
フォーレ子守歌
ドビュッシー亜麻色の髪の乙女
ブートリーカプリチォ
ミヨースカラムーシュより モデレ、ブラジレイラ
ラヴェル亡き王女の為のパヴァーヌ
ガーシュインパリのアメリカ人
西川 幾子(p) 服部 真由子(p) 桑田 眞里(vn) 和久井 仁(ob) 大城 正司(Sax) 桑田 晃(Trb)
ゲスト 檀ふみ

毎年夏に京都で開催される「たのしい音楽会」も今年で第5回。私は昨年の第4回を友人に教えてもらって聴きに行ったのが初めてです。 今回は「フランス音楽のフルコースを召し上がれっ!」という副題のとおり、フランス音楽の小品を集めた選曲でした。 (なぜか、アメリカ音楽のガーシュインがプログラムのメインになっていますが。)
このコンサートでは出演者が演奏の前(あるいは後)に一言話すのがお決まりなのですが、今回はゲストに檀ふみさんがいらしていて、 檀さんが演奏者になかなか鋭いツッコミを入れ、演奏者がツッコミをかわし、会場からは笑いが絶えない、演奏以外の部分でも楽しめる演奏会でした。

プログラムの前半は、2台ピアノ(プーランク)、オーボエとピアノ(ブレビーユ)、ヴァイオリンとピアノ(フォーレ、ドビュッシー)、 トロンボーンとピアノ(ブートリー)、サクソフォーンとピアノ(ミヨー)という、デュオの小品が続きました。
休憩を挟んで後半は全員出演してのアンサンブル。
ラヴェルのパヴァーヌは、オーケストラあるいはピアノソロで演奏される事が多いのですが、 ここでは2台ピアノ、ヴァイオリン、オーボエ、サクソフォーン、トロンボーンという、他では考えられない(笑)アンサンブルによる演奏でした。 それでもオーケストラで聴くのとあまり変わらないような色彩を感じられたのは、やはり2台のピアノの力によるものが大きいのかな、とも感じました。
トリの「パリのアメリカ人」。なんでこの曲が入っているかというと・・・。メンバー全員が集まってお酒など飲みながら、曲目を考えていたとき、 誰かが「パリのアメリカ人なんかいいんじゃない」と言い出し、曲名に「パリ」が入ってるからフランス音楽だろう、と、 その場にいた全員が妙に納得して決まったとか。で、後になって「しまった!」と思ったそうですが既に遅し、ということで「パリのアメリカ人」。
パリのアメリカ人ではタクシーのクラクションを模した、「豆腐屋のチャルメラ」に似たラッパやらその他打楽器も登場。 通常であれば打楽器奏者が演奏するのですが、ラッパはピアノの西川さんが受け持つ事に。ピアノを弾いたかと思うと傍らのラッパをおもむろに取り出し、 とにかく大変そうでした。
ラヴェルの「パヴァーヌ」と「パリのアメリカ人」をこの特殊な編成のために編曲したのは島田三郎氏。この方、実はヴァイオリンの桑田さんのお父さんで、 編曲者としてのペンネームが島田三郎、という事だそうです。本業はオーケストラのトロンボーン奏者で、昨年の「たのしい音楽会」でも、 リムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」をこの編成のために編曲されたそうです。
来年は、果たしてどんなオーケストラ曲がこのメンバーのために編曲されて舞台に登ることやら、今から楽しみです。

October 20 2001

石川県立音楽堂会館記念企画展「音楽堂・楽器博物館」レクチャー・コンサート(石川県立音楽堂)
〜シュバルトリンクで聴くシューベルトとチェコ音楽の世界〜 (開演 午後3時)

曲目
F.P.シューベルトハンガリーのメロディー ロ短調 D817
ピアノとヴァイオリンのためのソナチネ ニ長調 D384
3つのピアノ曲 D946より 第2曲 変ホ長調 D946-2
レクチャー対談ピアノの歴史とシュバルトリンクのピアノ
Z.フィビヒ「気分・印象、そして追憶」より
op41-44,Andante
op41-169,Maestoso quasi parlando.
op41-54,Con sentimento
op41-74,Andante e dolce
op41-65,Andante
op41-21,Allegretto
op41-139,Lento
op41-36,Andante amoroso
op41-151,Molto moderato ed espressivo.
op41-27,Andantino
op41-53,Lento
op41-24,Allegretto grazioso.

演奏 筒井一貴(ピアノ) 斎藤早紀子(ヴァイオリン)
解説 山本宣夫 司会 竹内明彦

JR金沢駅の東口にオーケストラ・アンサンブル・金沢の本拠地として建てられ、 この9月に開館した石川県立音楽堂の開館記念企画の一環として、 歴史上のターニングポイントに残る様々な楽器を展示する催しが音楽堂交流ホールにて開催されています(10/11〜25)。 その企画には、誕生当時の物をはじめ、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、 ブラームスと言った大作曲家が愛用したピアノと同じメーカーのピアノ、 しかもそれぞれの時代のピアノの現物を修復した(あるいは往時のものと同じ部材を用いて復元した)ピアノも出展され、 さらに、それら往時のピアノを用いて、上に述べた作曲家の作品を演奏する、という試みが5回(当初は4回予定)に渡り、 開催されました。
実は、この演奏会でピアノを演奏した筒井氏はインターネットを通じて知り合った友人であり、 「フィビヒを演奏するから。」と、演奏者本人に強く誘われて(まんまと釣り上げられたという話もあるが、それはともかく(笑)、 はるばる金沢まで今回の演奏会を聴きに出向いたのでした。

この企画に出展されているピアノは、大阪は堺市にある「クリストフォリ堺」の山本宣夫氏所有のコレクションからの数点でした。 山本氏によるショート・レクチャーでは、氏の調律師・国立ウィーン芸術誌博物館専属修復師としての技術と経験、 オリジナル・ピアノに対する深い愛着の一端を窺い知ることができ、また、筒井氏の演奏によって、 復元されたオリジナル・ピアノに新たに命を吹き込まれる、とても興味深い演奏会でした。

さて、演奏自体のことを。実は、この演奏会であらかじめ知っていた曲は、 フィビヒの「気分、印象、そして追憶」というピアノ曲集の中のわずか3曲(op41-54、op41-139、op41-151)だけでした (NAXOS盤の「気分、印象と思い出」に収録)。
フィビヒが晩年に18歳年下の弟子であるアネシカ・シュルツォヴァーとの恋愛を綴った、 音楽による日記である376曲から成るピアノ曲集「気分、印象、そして追憶」の中で最も聴きなじんでいるop41-139は、 楽譜(私は全音版1冊のみ所有)ではLentoと表記されているものの、当日の演奏ではLentoというにはかなり速いテンポでした。 しかし、そのことにより、儚げな雰囲気が醸し出されていたように感じられました。 また、op41-54は、「アネシカの舌を描いた」とされている曲ですが、そのエピソードに違わず、相当に隠微な雰囲気を聴き取る事ができました。
ピアノそのものについてですが、シュバルトリンクはあまり音が伸びない、という印象を受けました。 現代のスタインウェイやベーゼンドルファーの響きに慣れ親しんだ耳には、音量的に物足りなく感じられる向きもあるかもしれません。 また、ピッチも、現代のA=442Hzに対し、シュバルトリンクはA=430Hzと、周波数が低いそうで、 シューベルトのソナチネで共演されたヴァイオリンの斎藤さんは、 「現代のA=442Hzというピッチに慣れているので、シュバルトリンクと合わせる時は随分面食らった」 とおっしゃっていました。 そのようなピアノを用いての演奏だったせいか、殊にフィビヒでは曲にほの暗さを感じられました。

フィビヒという作曲家が日本ではまだまだ知名度が低い、ということもあり、 プログラムの最後にはフィビヒについての簡単な紹介が掲載されていましたが、 その文章は筒井氏と私の共通の友人が開設している、気分・印象、そして追憶 〜 Zdenek FIBICHというフィビヒに関するWebサイトのトップページからの引用(実のところ、そっくりそのままのコピーでしたが)でした。


終演後の風景。私をはじめ、取り巻いていた仲間たちと談笑しながらシュバルトリンクを演奏する筒井氏


シュバルトリンクの鍵盤。白鍵はアワビとかサザエの貝殻の裏側のようにきらきらしています。黒鍵は金箔にべっ甲をかぶせたものだとか。


シュバルトリンクの内部。現代のピアノと大きく異なるのは、全ての弦が平行に張られていることと、筐体に鉄が全く使われていないことだそうです。



石川県立音楽堂会館記念企画展「音楽堂・楽器博物館」ミュージアム・コンサート(石川県立音楽堂)
〜プレイエルで聴くショパンの世界〜 (開演 午後7時)

曲目
F.F.ショパン
ポロネーズ第1番 嬰ハ短調 op26-1
ポロネーズ第2番 変ホ短調 op26-2
ノクターン第1番 変ロ短調 op9-1
ポロネーズ第6番 変イ長調 op53
ノクターン第16番 嬰ホ長調 op55-2
即興曲第3番 変ト長調 op51
子守歌 変ニ長調 op57
舟歌 嬰へ長調 op60
演奏 筒井一貴(ピアノ)
解説 山本宣夫 司会 竹内明彦

午後3時からの演奏会に引き続き、午後7時からはショパン・プロでした。 当初、「入場無料(要整理券)」で、しかも整理券は全て出てしまっていたので聴けないものだと思っていたところ、 整理券なしでも演奏を聴くことができる、ということになり、急遽、演奏を聴くことに決めたのでした。
長年にわたり、どうしてもショパンは聴かず嫌いであり、苦手意識を持っていたため、プログラムを見ても知っている曲がない、 と思い込んでいました。が、ポロネーズ6番があまりにも有名な「英雄ポロネーズ」だったとは、演奏を聴くまで知りませんでした(苦笑)。

ショパンが生きていた当時のプレイエルの修復ピアノの音色を実際に聴いてみて感じたことは、大きな音量の出ない響きが繊細である、という事。 このプレイエルの所有者であり、修復を行った山本氏のお話では、 「ショパンはプレイエルのほかにエラールも持っていたが、プレイエルの音色のほうが好みであった」 という事でした。

演奏について。先にも述べたように、何しろショパンについては長年にわたって聴かず嫌いであり、敬遠してきたので、 せいぜい英雄ポロネーズくらいしか知らないのです。
その英雄ポロネーズですが、中間部でリズムを刻む箇所(打ち上げの席で筒井氏は「あぁ、汽車ポッポの部分ね」と言っていました)、 そこでよくありがちなのは、ガンガンと力任せにフォルティシモで弾いてしまう、という演奏で、私はそれを耳にする度に 「英雄ポロネーズって、うるさい曲だなぁ」と感じていたのです。ところが当夜の演奏では、フォルティシモではなく、 せいぜいメゾフォルテくらい?の音量で、曲が一番盛り上がる部分でようやくフォルテくらい、と音量に関して言えば、 よく耳にするものと比べて抑えたものになっていました。私はこの演奏を聴いて、心底はっとしました。
今まで、「ショパン=うるさい」というかなり偏ったイメージを持っていたのですが、そのイメージを捨てるまでは行かなくても、 少し修正すべきではなかろうかと。これは、友人の演奏だったからひいき目に見ている、という事でなく、本当にはっとした瞬間でした。 もしかすると、あまり音量の出ないプレイエルによる演奏だったからかもしれないし、演奏会場になっていた場所の音響の加減なども、 私の判断に何らかの影響を与えていたでしょうが、それがきっかけで、「ショパンをもう少し聴いてみよう」という気にさせられ、 金沢まで演奏を聴きに出かけた中での最大の収穫でした。


プレイエルの内部。山本氏が入手した当時は「ボロボロだった」という言葉を裏付けるかのよう。鉄のフレームの塗装は剥げ、サビが浮いています。


プレイエルの全景。

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